電子契約と原本郵送の線引き:速達・レターパックの判断基準

電子契約で完結できるケースと、紙原本の郵送が必要なケースを整理。行政書士業務(契約書・委任状・証明書添付)で迷いやすい「電子 vs 紙」の線引きを、証跡・納期・法令根拠の観点で明確化します。

目次

まず押さえる「電子契約と紙原本」の基本ルール

電子契約とは?

電子署名法に基づき、契約当事者の署名意思を電子的に示した契約形態。
電子署名・タイムスタンプにより「本人性・非改ざん性」を担保します。

紙原本(書面契約)とは?

紙に署名押印を行い、物理的な保管・提出が求められる書類
官公庁・金融機関・司法書士提出書類など、法令で紙提出が定められるケースも存在します。

線引きの原則

区分電子契約で完結原本郵送が必要
一般的な業務委託契約・NDA電子可
官公庁への申請添付(委任状・誓約書)多くが原本必須
金融・登記関連契約一部可多くが原本必須
個人情報同意書電子署名で可
内容証明・証拠保全用契約タイムスタンプ併用紙原本併用推奨

判断フロー:電子で足りる? 原本を送る?

契約書類の種類は?
  • 契約書・NDA・覚書
    • 紙押印指定なし → 電子契約(クラウド署名)で完結
    • 紙押印が求められる → 原本郵送
  • 委任状・誓約書・申請添付書類
    • 官公庁提出書類は「押印+原本」
  • 登記・金融関連
    • 原本郵送が安全(金融庁・法務局対応)
  • 内容証明・証拠化契約
    • タイムスタンプ付電子署名 → 電子保存で可
    • 紙証拠が必要 → 速達・書留で郵送
  • 行政機関に提出する委任状・証明書類:必ず紙。
  • 業務委託契約・顧問契約:電子署名サービスで代替可能。
  • 本人確認書類の写し:電子データで可(PDF/A保存推奨)。

速達・レターパックを使い分ける判断基準

区分料金配達日数特徴向いているケース
速達(普通郵便+300円)約450円〜翌日配達最も早い。郵便局受付。締切日提出・法務局期限ギリギリ案件
レターパックライト430円翌日〜翌々日受箱投函・追跡あり請求書・軽量原本の送付
レターパックプラス600円翌日〜翌々日対面受取・追跡あり契約書原本・重要文書の発送
クリックポスト185円翌々日〜ネット決済・追跡あり・信書不可請求書副本・通知文など信書以外
選択の基本ルール
  • 納期が翌日以内:速達 or レターパックプラス
  • 4kgまで、厚さ3cm以内:レターパックライト
  • 副本・控え書類:クリックポスト(※信書不可に注意)
  • 証跡が必要な契約書原本:レターパックプラス or 書留

PDF/A保存と追跡保全の「型」

PDF/Aとは?

国際標準の「長期保存用PDF形式」。フォントや色を埋め込み、将来も再現可能な形式で保存する仕様。

実務での保存ルール
  • 契約書・委任状・証明書の控えはPDF/A-1b形式で保存。
  • ファイル名は「日付_契約名_相手方名.pdf」。
  • 署名済みPDFはクラウドに保存+外付けSSDに月次バックアップ。
  • 追跡番号(レターパック・書留)はシートにURL形式で保存
    例:https://tracking.post.japanpost.jp/services/srv/search/direct?requestNo1=XXXXXXXXXX

電子契約サービスのPDF保存機能でも、PDF/A対応でない場合は
Acrobat ProPDF24 Creatorなどで再保存しておくのが安全。


行政書士の実務における「電子×紙」ハイブリッド運用

  • 電子契約:契約スピード・署名コストを削減。
  • 紙原本郵送:行政機関提出・対面証跡に必須。
  • 速達・レターパック選択:納期と証跡のバランス判断。
  • PDF/A保存+追跡URL保全:証跡・説明責任を両立。
  • 原本返送は台帳+発送ID管理でトレーサビリティ確保。

電子契約化が進む今でも、紙でなければ法的効力が生じない書類」は多く存在します。
電子署名・PDF/A保存でスピードと証跡を確保
しつつ、紙原本は速達・レターパックプラスで確実な到達を担保する。
この二段構えこそ、行政書士の信頼性と生産性を両立する仕組みです。
業務効率化とは、単なる時短ではなく時間当たり報酬単価の向上
電子化+紙郵送の最適分岐を明確にし、判断・発送・保存を仕組み化することが重要です。

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この記事を書いた人

地方在住の行政書士。令和4年の開業以来、事業者・不動産関連の許可申請を中心に、年間150件以上の案件に対応。ひとり事務所ながら、スピードと信頼性を両立した実務力で、地域の信頼を獲得。
「行政書士|ツールラボ」監修

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