解体工事で必要な書類一覧|見積書・契約書・残置物確認・建設リサイクル法対応を解説

 解体工事では、建物を取り壊す作業だけでなく、契約前の現地確認、見積書の作成、工事請負契約、廃棄物の処理、工事完了後の報告など、さまざまな書類を取り扱います。
 特に解体工事では、解体する範囲、建物内の残置物、地中埋設物、廃棄物の処理条件などについて、発注者との認識に違いが生じやすいため、事前に書面で整理しておくことが重要です。
 また、一定規模以上の解体工事では、建設リサイクル法に基づく事前説明、届出、契約書面への記載、再資源化等の完了報告などが必要になります。
 本記事では、解体工事業者の方に向けて、契約前から工事完了までに使用する主な書類と、実務上の注意点を解説します。
 なお、法令により作成・交付等が義務付けられる書類と、トラブル防止や社内管理のために任意で使用する書類は区別して説明します。

目次

解体工事で使用する主な書類と作成の流れ

解体工事に関係する書類は、工事の進行に合わせて整理すると分かりやすくなります。

STEP
契約前に使用する書類
  • 現地調査記録・工事範囲の確認資料
  • 解体範囲・残置物等の事前確認書
  • 見積書
  • 契約前の確認チェックリスト
  • 資材価格・労務費等の変動に関する事前通知書(該当する場合)
  • 建設リサイクル法に基づく事前説明書(対象工事の場合)

契約前には、工事内容や金額だけでなく、撤去するものと残すもの、廃棄物処理の範囲、施工条件等を整理しておくことが重要です。

STEP
契約時に使用する書類
  • 工事請負契約書
  • 工事請負契約約款
  • 分別解体等・再資源化等に関する契約別紙(対象工事の場合)
  • 見積書・仕様書・図面等の契約添付資料

工事請負契約書には、工事内容、請負代金、工期、支払条件等を記載します。

建設リサイクル法の対象工事では、同法に基づく事項を契約書面に記載する必要があります。

STEP
着工前・施工中に使用する書類
  • 建設リサイクル法に基づく届出書類(対象工事の場合)
  • 石綿(アスベスト)事前調査関係書類
  • 産業廃棄物処理委託契約書・マニフェスト等(該当する場合)
  • 請負代金・工期変更の協議申出書
  • 追加・変更工事確認書

着工前には、必要な届出・調査・施工体制等を確認します。

工事中に追加作業が発生した場合は、変更内容や金額、工期への影響を書面で確認しておくことが望まれます。

STEP
工事完了後に使用する書類
  • 工事完了・引渡確認書
  • 再資源化等完了報告書(対象工事の場合)
  • 工事写真・廃棄物処理関係資料
  • 請求書・領収書

完成時には、工事の完了状況や残工事の有無、引渡内容などを確認します。

建設リサイクル法の対象工事では、再資源化等の完了後に元請業者から発注者へ書面で報告する必要があります。

契約前に確認しておきたい解体範囲・残置物・地中埋設物

解体工事では、契約前に確認した内容と実際の施工内容が一致していることが重要です。

特に、次の項目は認識の違いが生じやすい部分です。

解体するものと残すものを明確にする

例えば、住宅の解体工事では、次のような確認事項があります。

  • 主建物・附属建物の解体範囲
  • 基礎や土間コンクリートの撤去範囲
  • ブロック塀・フェンス等の撤去
  • 庭木・庭石・物置等の取扱い
  • 地中に残されている杭や構造物
  • 給排水管その他の埋設設備
  • 整地の範囲や仕上がり条件

「建物解体工事一式」とだけ記載している場合、附属建物や外構、基礎等まで撤去する契約なのかが不明確になることがあります。

そのため、撤去対象・残置対象・別途工事となるものを分けて記録することが望まれます。

事前に判断できない事項は、無理に確定させず、「不明」「要確認」などとして記録しておく方法も考えられます。

残置物の取扱いを事前に確認する

建物の解体前に、家具、家電、生活用品、事務用品などが残されていることがあります。

これらの残置物は、建物を解体して発生する廃棄物とは区別して考える必要があります。

例えば、一般家庭から排出される不用家具・生活用品等の残置物は、通常、一般廃棄物として取り扱われます。

一般廃棄物の収集運搬等には、原則として市町村の許可等が必要であり、解体工事業の登録や産業廃棄物収集運搬業の許可だけで、家庭の残置物を自由に収集運搬できるわけではありません。

残置物は原則として所有者・占有者等が解体工事前に適切に処理する必要があるため、発注者と処理方法・担当者・撤去期限を確認しておくことが重要です。

事業所等の残置物では、廃棄物の種類により産業廃棄物と一般廃棄物の区分が異なります。

地中埋設物や施工条件の確認

解体工事では、着工後に地中埋設物等が発見されることがあります。

例えば、既存の図面に記載されていなかったコンクリート基礎、杭、埋設配管などです。

また、重機の進入経路、廃材の搬出条件、隣接建物との距離等によって、施工方法が変わることもあります。

契約前には把握できない事項があるため、追加撤去が必要になった場合の協議方法や費用負担の考え方についても、契約書・約款等で整理しておくことが望まれます。

解体工事の見積書・工事請負契約書で確認する事項

見積書は工事内訳を分かりやすく記載する

解体工事の見積書では、工事内容や施工条件に応じて、次のような項目が考えられます。

  • 仮設工事・養生
  • 建物解体工事
  • 基礎・土間コンクリート撤去
  • 附属建物・外構等の撤去
  • 廃材の分別・積込
  • 廃材の運搬・処分
  • 重機回送
  • 整地
  • 現場管理費・その他必要経費

これらは一般的な記載例であり、すべての工事で同じ項目を使用するわけではありません。

見積書では、工事内訳に加え、対象範囲、含まれない作業、追加費用が発生する条件なども明確にしておくと、発注者との認識違いを防ぐことにつながります。

工事請負契約書・約款を整備する

建設業法第19条では、建設工事の請負契約について、工事内容、請負代金、工期などの所定事項を書面に記載し、当事者間で相互に交付することが定められています。

解体工事でも、契約時には次のような事項を整理する必要があります。

  • 工事件名・工事場所
  • 工事内容・施工範囲
  • 請負代金・支払条件
  • 工事着手・完成時期
  • 追加・変更工事の取扱い
  • 請負代金や工期の変更方法
  • 完成・引渡しに関する条件
  • 契約解除等に関する事項

工事請負契約書と契約約款を組み合わせ、必要に応じて見積書、図面、工事範囲の確認資料等を添付して契約内容を明確にします。

また、資材価格や労務費等の変動によって請負代金・工期に影響するおそれがある場合には、建設業法上の通知規定や契約条件に沿った対応が必要になります。

契約前にリスクを通知する書面と、契約後に変更協議を申し出る書面は、それぞれ目的が異なるため、区別して使用することが重要です。

建設リサイクル法の対象工事で必要となる書類

解体工事では、建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)への対応も重要です。

建築物の解体工事は床面積80㎡以上が一つの基準

建設リサイクル法では、コンクリート、木材、アスファルト・コンクリート等の特定建設資材を用いた建築物等について、一定規模以上の対象工事に分別解体等・再資源化等を義務付けています。

建築物の解体工事については、解体する部分の床面積の合計が80㎡以上であることが対象規模の基準です。

また、建築物以外の工作物に関する工事(土木工事等)については、請負代金の額が500万円以上(税込)であることが対象規模の基準です。

ただし、建設リサイクル法の対象工事となるかどうかは、特定建設資材の使用状況や工事内容等も踏まえて判断する必要があります。

また、建築物以外の工作物の解体工事等については、請負代金額による別の基準があります。

着工前の説明・契約・届出

建設リサイクル法の対象工事では、工事の進行に応じて次の手続が必要です。

STEP
元請業者から発注者への事前説明

元請業者は、分別解体等の計画などについて、発注者へ書面を交付して説明する必要があります。

STEP
契約書面への法定事項の記載

対象工事の請負契約では、分別解体等の方法、解体工事に要する費用、再資源化等を行う施設の名称・所在地、再資源化等に要する費用など、所定事項を契約書面に記載する必要があります。

これらは、工事請負契約書に別紙を添付して整理する方法もあります。

STEP
発注者による事前届出

対象工事では、原則として工事着手の7日前までに、発注者が所管行政庁へ必要な届出を行います。

発注者の委任を受けて代理人が手続を行う場合もあります。

届出様式や必要な添付資料、受付窓口は、工事場所を管轄する行政庁の案内を確認してください。

なお、契約書に建設リサイクル法関係の別紙を添付することと、行政庁への届出を行うことは別の手続です。

STEP
下請業者への告知(下請契約がある場合)

対象工事の全部または一部を他の建設業者に下請負させる場合、元請業者は、発注者が届け出た分別解体等の計画などの届出事項を下請業者へ告知する必要があります。

告知には、所定事項を整理した告知書などを活用できます。

元請業者から発注者への事前説明と、下請業者への告知は、それぞれ異なる手続であるため、区別して管理することが重要です。

STEP
工事完了後の再資源化等完了報告

対象工事では、元請業者が再資源化等の完了後、発注者に対して書面で報告する必要があります。

報告書では、主に次のような事項を整理します。

  • 再資源化等の完了年月日
  • 再資源化等を行った施設の名称・所在地
  • 再資源化等に要した費用

また、再資源化等の実施状況について、法令に基づく記録の作成・保存も必要です。

工事の完成確認と再資源化等の完了報告は目的が異なるため、それぞれ適切に管理しましょう。

石綿事前調査・廃棄物処理関係書類にも注意

石綿(アスベスト)事前調査

建築物等の解体・改修工事では、法令に基づき石綿含有建材の有無について事前調査を行う必要があります。

また、建築物の解体工事で解体部分の床面積が80㎡以上となる場合など、一定規模以上の工事については事前調査結果の報告義務があります。

80㎡未満であれば石綿事前調査自体が不要になるわけではありません。

建築物の解体・改修工事では、原則として建築物石綿含有建材調査者等の有資格者による事前調査が必要です。

石綿事前調査の実施義務と、一定規模以上の工事における事前調査結果の報告義務は別のものです。

そのため、報告対象規模に満たない工事であっても、事前調査や調査結果の記録・掲示等について確認する必要があります。

調査の実施者の資格、調査結果の記録・保存・掲示、報告の要否などについて、適用される法令を確認する必要があります。

産業廃棄物の委託契約書・マニフェスト

解体工事から発生する建設廃棄物については、原則として元請業者が排出事業者となります。

産業廃棄物の処理を他の事業者に委託する場合には、廃棄物処理法に基づく委託契約やマニフェスト等による管理が必要です。

また、適切な処理業者を選定し、廃棄物の種類や処理状況等を確認する必要があります。

建設リサイクル法関係の契約別紙や再資源化等完了報告書を作成することによって、廃棄物処理法上の委託契約書やマニフェストが不要になるわけではありません。

これらはそれぞれ異なる法令に基づく書類として管理します。

追加・変更工事は口頭だけで済ませない

解体工事では、着工前の調査だけでは確認できなかった事項が、施工中に判明することがあります。

例えば、次のようなケースです。
  • 地中から想定外のコンクリート構造物が見つかった
  • 当初予定していなかった基礎や杭の撤去が必要になった
  • 解体範囲が変更された
  • 石綿含有建材の確認により施工方法を見直す必要が生じた
  • 廃棄物処理施設の受入条件等が変更された

このような場合には、追加費用や工期の変更が生じる可能性があります。

変更協議と変更契約は区別する

追加・変更工事に関しては、次の2段階で整理すると分かりやすくなります。

① 請負代金・工期変更の協議申出

変更が必要となった理由、想定される増減額、工期への影響、根拠資料等を整理し、発注者へ協議を申し出ます。

この段階では、変更内容が確定しているとは限りません。

② 追加・変更工事の合意

協議の結果、追加・変更内容について合意した場合には、変更後の工事内容、金額、工期等を書面に記録します。

協議を申し出たことと、変更契約が成立したことは別であるため、両者を区別して管理することが重要です。

追加・変更工事については、できる限り施工前に双方で確認しておくことが望まれます。

工事完了・引渡し・請求までの書類管理

工事完了・引渡確認書

解体工事が完成した際には、次のような事項を確認します。
  • 契約した解体範囲の施工状況
  • 残工事・是正事項の有無
  • 整地・清掃の状況
  • 引渡日・引渡方法
  • 工事写真
  • 廃棄物処理関係資料
  • その他の引渡資料

完了時の状況を書面に残すことで、契約した工事がどのような状態で完成・引渡しされたのかを確認しやすくなります。
なお、工事完了・引渡確認書は、建設リサイクル法の再資源化等完了報告書とは異なる目的の書類です。

請求書・領収書

工事代金の請求時には、請求対象の工事や支払条件が分かるように整理します。

着手金や既払金がある場合には、請求額との関係を明確にしておくことが重要です。

また、工事代金を受領した場合には、必要に応じて領収書を発行します。

請求書と領収書についても、工事件名や請求番号等を統一すると、案件ごとの管理がしやすくなります。

解体工事業者からよくある質問

80㎡未満の解体工事なら、契約書や確認書は不要ですか?

いいえ。80㎡という基準は、建築物の解体工事について建設リサイクル法の対象規模を判断する際の基準です。

対象規模に満たない工事でも、建設業法上の契約書面への対応や、工事範囲・金額・工期等の確認は必要です。

また、石綿事前調査や廃棄物処理に関する規制についても、個別に確認する必要があります。

残置物は解体業者がそのまま処分してもよいですか?

解体工事で発生する廃棄物と、解体前から建物内に存在する残置物は区別する必要があります。

一般家庭の残置物は通常、一般廃棄物に該当するため、所有者・占有者等が市町村のルールに従って適切に処理することが基本です。

解体工事業の登録や産業廃棄物収集運搬業の許可だけで、家庭の残置物を自由に収集運搬できるわけではありません。

建設リサイクル法の届出は元請業者が提出するものですか?

対象工事の届出義務者は、原則として発注者です。

元請業者には、発注者への事前説明や契約書面への必要事項の記載、再資源化等完了後の報告など、別の義務があります。

発注者の委任を受けて代理人が届出を行う場合もありますが、届出義務者と元請業者の役割は区別しておく必要があります。

追加工事の費用は、変更協議の申出書を渡せば請求できますか?

変更協議の申出書は、変更の必要性や金額等について協議を申し出るための書面です。

提出しただけで、追加工事代金や工期変更について双方の合意が成立するわけではありません。

変更内容について合意した場合には、追加・変更工事確認書や変更契約書等で整理しておくことが望まれます。

まとめ|解体工事は契約前から完了報告までの書類整理が重要

解体工事では、見積書や工事請負契約書だけでなく、解体範囲、残置物、地中埋設物、廃棄物処理、追加・変更工事などについて確認する書類が重要になります。

特に、次の4点を意識しておくとよいでしょう。
  1. 契約前に解体範囲・残置物・施工条件を明確にする
  2. 契約書・約款と必要な法定書面を整える
  3. 追加・変更工事の内容・金額・工期を記録する
  4. 工事完了・引渡しと再資源化等の報告を適切に管理する

法令に基づく書類と、契約・工事管理のための書類を使い分けることで、実務上の確認漏れや、発注者との認識違いを減らすことにつながります。


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  3. 資材価格・労務費等の変動に関する事前通知書
  4. 工事請負契約書
  5. 分別解体等・再資源化等 契約別紙
  6. 工事請負契約約款
  7. 請負代金・工期変更 協議申出書
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参考資料・公的情報

本記事は、国土交通省、環境省、地方自治体等の公表資料を参考に作成しています。

記事の確認日:2026年10月10日

※本記事は解体工事業者向けの一般的な制度・実務解説です。建設リサイクル法の対象該当性、石綿調査、産業廃棄物処理、各種許認可・届出等の必要性は工事内容や自治体によって異なるため、実際の案件については最新の法令や所管行政庁の案内等をご確認ください。

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この記事を書いた人

地方在住の行政書士。令和4年の開業以来、事業者・不動産関連の許可申請を中心に、年間150件以上の案件に対応。ひとり事務所ながら、スピードと信頼性を両立した実務力で、地域の信頼を獲得。
「行政書士|ツールラボ」監修

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