行政書士が開業初期に整えるべき「事務所規程」と「業務フロー」|トラブルを未然に防ぐ内規・運用ルール(Notion/Dropbox活用)

行政書士の開業直後は、受任・書類作成・申請・請求までが「忙しさ任せ」になりがちです。しかし、最初に“事務所規程(内規)”と“業務フロー”を決めておくと、ミス・クレーム・情報漏えい・家族運営のトラブルを大幅に減らせます。本記事では、開業初期から用意しておきたいルールと、受任〜請求までの流れを、Notion/Dropbox等のツール活用も含めて具体例つきで紹介します。

目次

なぜ「事務所規程」と「業務フロー」が最優先なのか(よくあるトラブル例)

行政書士業務は、委任関係(依頼者との約束)と期限(提出期限・補正期限)が重なるため、ルール不在=事故の温床になりやすいです。特に開業初期は「案件の進捗」「原本管理」「請求・入金」が混線しがちです。

よくあるトラブル(未然に防げるもの)
  • 受任条件が曖昧で、途中で追加作業が発生→報酬の認識違い・値引き交渉
  • 期限管理が属人化→提出遅延補正期限切れ、依頼者への説明負担
  • 原本(戸籍・印鑑証明・委任状など)返却漏れ→信用失墜
  • 家族が電話・郵送・入力を手伝う→権限や守秘の線引きが曖昧で揉める
  • クラウド共有が雑→誤送信・誤共有(個人情報の漏えいリスク

開業初期に整えるべきは「立派な規程」より、毎日守れる“最小ルール”です。最小ルールを決め、案件が増えたら追記していく運用が現実的です。


行政書士事務所の「事務所規程」ひな型(最小構成のチェックリスト)

ここでは、開業初期でも運用できる“最小構成”の項目に絞ります。
文章はそのままコピペして使える形にしています(自事務所向けに調整してください)。

事務所規程(最小版)

第1章 総則

  1. 目的:本規程は、行政書士業務の品質・期限・情報管理を統一し、事故とトラブルを防止するために定める。
  2. 適用:当事務所が受任する全業務、ならびに業務補助(家族・外注等を含む)に適用する。

第2章 受任・契約・報酬
3. 受任前の確認:業務範囲、提出先、期限、必要書類、見込み期間、概算費用を事前に説明する。
4. 受任の成立:原則として、受任内容(作業範囲)と報酬、実費負担、納期目安を明確化した上で着手する。
5. 追加作業:受任後に追加作業が発生する場合は、事前に作業内容と追加報酬の説明を行う。
6. 入金ルール:着手金・実費の預り・請求タイミングを案件種別ごとに定め、入金確認後に次工程へ進む。

第3章 期限・進捗管理
7. 期限登録:受任時に必ず「提出期限/補正期限/依頼者回答期限」を登録する。
8. ステータス運用:案件は共通のステータス(例:受付→資料待ち→作成→確認→提出→補正→完了→請求→入金→保管)で管理する。
9. 例外時の連絡:期限遅延の恐れが生じた時点で、依頼者へ早期連絡し、代替案(期限延長相談、必要資料の優先順位)を提示する。

第4章 書類・原本・押印
10. 原本受領:原本を預かる際は、受領日・内容・返却予定日を記録する。
11. 原本保管:原本は案件別に保管し、閲覧・持出を制限する。
12. 押印・署名:依頼者押印が必要な書類は、押印箇所・押印種別(認印/実印等)・返送期限を明確に案内する。
13. 返却:完了時に原本一式を返却し、返却記録を残す。

第5章 個人情報・情報セキュリティ
14. アクセス権:案件情報へのアクセス権は必要最小限とし、共有範囲を定める。
15. ファイル命名:案件ID/依頼者名/日付/書類名を含む命名規則を統一する。
16. クラウド運用:クラウド保存・共有は、案件フォルダ単位で行い、外部共有リンクは期限付き・権限最小で設定する。
17. バックアップ:データは定期的にバックアップし、端末故障・誤削除に備える。

第6章 クレーム・事故対応
18. 事実確認:苦情や事故の申告があった場合は、時系列・証跡(メール、通話記録、提出控え等)を整理する。
19. 報告と再発防止:原因・対応・再発防止策を記録し、運用ルールに反映する。


受任〜請求までの標準業務フロー(案件管理の型を固定する)

開業初期に強いのは、案件の型”を決めて、例外を減らす方法です。
ここでは、どの業務(建設業許可・農地・産廃・古物など)でも流用できる標準フローを提示します。

標準業務フロー(8ステップ)

STEP
受付(一次ヒアリング)
  • 依頼内容/提出先/希望期日/緊急度/既存資料の有無を整理
  • NG案件(期限が物理的に無理、要件未充足が明白等)は早期に判断
STEP
見積・作業範囲の確定(受任条件の明文化)
  • どこまでやるか(作成のみ/提出代行まで/補正対応まで)」を言語化
  • 実費(証紙・送料等)と報酬を区分
STEP
受任(着手条件のクリア)
  • 着手金や実費預りのルールに沿って、着手条件を満たしてから開始
STEP
資料回収・原本管理
  • 必要資料リストを渡し、期限を設定
  • 原本受領・返却の記録を残す
STEP
作成・品質チェック(セルフレビュー)
  • 申請書・添付書類の整合(住所・地番・法人番号・押印等)
  • 提出先ごとの形式要件に合わせる(部数、綴り方、控え等)
STEP
依頼者確認(最終確認)
  • 署名押印の要否、内容確認の範囲、返送期限を明確化
  • 修正依頼は“締切”を設定
STEP
提出・補正対応
  • 提出控え・受付印・受付番号など証跡を保存
  • 補正は期限・内容・依頼者対応の要否を整理して処理
STEP
完了報告→請求→入金→保管(締め作業)
  • 完了報告(何を提出し、結果どうなったか)
  • 請求書発行→入金確認→領収書(必要に応じ)
  • 原本返却、電子データ整理、保管期限ルールに沿って保管

Notion/Dropboxでの実装例(シンプルで強い)

Notion(案件台帳)

案件ごとに「ステータス」「期限」「提出先」「必要資料」「請求・入金状況」を1ページに集約

Dropbox(案件フォルダ)

原本スキャンPDF、提出控え、完成版データを案件別に保存。共有は“フォルダ単位・閲覧権限最小
命名規則例 2026-001_依頼者名_提出先_書類名_2026-01-11.pdf


家族が関わる場合のルール作り/クラウド運用の注意点/おすすめの学び方

家族が関わる場合に“先に決める”べきこと

家族運営・家族補助は、体制構築に役立つ一方で、曖昧にするとトラブルになりやすい領域です。
最低限、次を決めておくと安定します。

  • 関与範囲:電話一次受付まで/発送作業まで/入力まで、など「やること・やらないこと」を明確に
  • 権限:閲覧できる情報の範囲、クラウドの共有範囲、パスワード管理(共有禁止のルール)
  • 守秘:依頼者情報を家庭内の会話に持ち込まない、画面の覗き見対策、紙の放置禁止
  • 連絡ルール:依頼者への回答は誰がするか(原則、行政書士本人が最終回答)
  • ログ(記録):電話メモ・発送記録・受領記録を必ず残す(口頭だけにしない

クラウド(Notion/Dropbox/Googleドライブ/OneDrive)の運用で事故を防ぐコツ

  • クラウドは“混在させない”:原則1つに統一(混在すると探し間違いが起きる)
  • 共有リンクは期限付き・権限最小:閲覧のみ、ダウンロード可否も案件に応じて
  • フォルダ構成を固定:案件フォルダ配下に「01_受領」「02_作成中」「03_提出」「04_完了・請求」など固定化
  • 誤送信対策:送付前チェック(宛先、添付、ファイル名、別案件混入)を“必須手順”にする

行政書士ツールラボ

便利なツールや書籍は、作業を速くするだけでなく「抜け漏れ防止」に効きます。無理なく続く仕組みを一緒に整えていきましょう。

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この記事を書いた人

地方在住の行政書士。令和4年の開業以来、事業者・不動産関連の許可申請を中心に、年間150件以上の案件に対応。ひとり事務所ながら、スピードと信頼性を両立した実務力で、地域の信頼を獲得。
「行政書士|ツールラボ」監修

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